家庭内暴力と子供たち・臨床ヒプノセラピスト・矢納摂子のホームページ

Setsuko Yano, M.A., MFT, CHT

家庭内暴力と子供たち



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ドメスティック・バイオレンスを体験する子供 *   ドメスティック・バイオレンスが子供に与える影響
ドメスティック・バイオレンスを体験した子供の治療

ドメスティック・バイオレンスを体験する子供

1984年の調査によると、アメリカでは3千3百万人の子供が毎年家庭内での親の暴力行為を目撃するそうです。 1990年の調査ではドメスティック・バイオレンス(DV)を子供が目撃・体験する率は40%から80%。DVが存在する家庭では 普通の家庭に比べ、児童虐待が起こる率が15倍高いそうです(1983年の調査)。 肉体的な暴力を目撃しない場合でも、それを耳にしたり、暴力の影響(親の怪我や家の損傷)を体験するかもしれません。 虐待的な夫婦関係では肉体的な暴力だけでなく言葉や精神的な暴力(バカにしたり、支配したり、 抑圧するなど)が存在することがよくあります。そのような家庭の子供は、不安で憎しみに満ちた、不健全な環境で 育ちます。子供に虐待が及ぶことはよくありますが、児童虐待については別のページに書くことにして、 このページにはDVを目撃・体験した子供について書きます。

ドメスティック・バイオレンスが子供に与える影響

心理的、行動的、社会的(対人関係や学校)に多大な影響を及ぼすことがわかっています。 うつ病 不安症、心身症、友達との対人関係の悩み、孤独、反抗、非行、犯罪や違法行為など、 影響は多方面に及びます。PTSD(下を参照)を引き起こす子供が多いです。 子供への影響の程度や大きさは、多様な要素が複雑に絡んできます。 例えば子供の年齢、強さや適応能力、性別、トラウマの頻度や程度。暴力が止んでいるのか、引き続いているのか、 他のストレスの程度も大きく関係します。関係者(たとえば母親)の育児能力、家事能力、共依存状態など。

    主な心理的な問題は下のものを含みます:

  • 親への愛着の不安定さ

    片方の親がもう片方から殴られているのを見ることは、トラウマになります。 子供を守り、子供の生活を安全なものとする親の能力への信頼感が失われ、 親への正常な愛着を育む障害となります。不安をなぐさめてもらうべき親に対しては愛着を持てない反面、 暴力的な家庭に住む不安と羞恥心が、だれか(または何か)にこの不安を軽減して欲しいという切望を 生み出します。

  • 内在化された症状 

    1)親の暴力を見聞きすること、2)それを恥じる気持ち、自尊心の喪失、 3)親への愛着を持てないこと(上参照) の3つがからまり、大きなトラウマの原因となります。

    回避、引きこもり、うつ、不安、恐怖、 異常な警戒心、怒り、自己評価の低さ、無表情、無感動などが見られます。特に虐待されたり、かえりみられなかった子供の場合、 この怒りが他人に向けられ、言動や対人関係に問題を生じることがあります。怒りは虐待した親に向ける人も、 虐待を阻止できなかった親に向ける人もいます。

  • 外在化された症状 

    暴力を見て育つことにより、親の暴力的な部分を内在化し、やがて親と同じように暴力を使うようになることがあります。 Donald G. Dutton の理論によると、 トラウマをかかえた子供は攻撃性に問題があり、自己や他者に対してかんしゃくを起こしたり、兄弟や学校の友達と喧嘩したりするような 破壊的な行為に出ることがあります。親の暴力にさらされた子供は社会適応力が低く、学力や学内活動での能力も 低いという調査結果が多くあります。1975年のアメリカ全国調査では、 DVを見聞きした男子は、成人して妻を肉体的に虐待する夫になる可能性が指摘されています。 男の子供は、暴力をふるう親に似る率がより高く、暴力をふるう親の70%は子供のときに肉体的、または性的な 虐待を体験しています。

  • PTSD (心的外傷後ストレス障害)

    生命に関わるような重大な危機による心的外傷体験を受けることにより、事件後も激しい恐怖感や無力感を引き起こす 不安障害の一種です。T. Landis (1989) とP. Lehmann (1997)は、 父親が母親を虐待しているのを見聞きした子供のうち半分以上はPTSDの症状を呈すると書いています。

ドメスティック・バイオレンスを体験した子供の治療

  • グループ療法

    E. Peled & D. Davis (1995)の研究によると、 このような子供たちの治療にはグループ療法が最も多く用いられているそうです。 体験を他の子供たちとプロセスできること、グループ形式の方が、楽しいし、子供に馴染みやすいし、 経済的であることが主な理由です。グループ療法を行いたい人のために、やり方やエクササイズ、テクニックを 書いたマニュアルが英語で 発行されています。("Group Treatment for Children Who Witness Woman Abuse: A Manual for Practitioners" published by Bentley, Lchmann, Loosely, Marshall, Rabenstein, & Sudermann in 1997)

    このような子供たちへのグループ療法の歴史は浅く、さらなる研究や調査が必要です。 グループ療法では次のような目標が掲げられるようです:

    1)DVを見聞きした体験を語り、分かち合う、プロセスする

    2)自己防衛法や非暴力の価値を教える。他者と尊敬の念を持って接するやり方を練習する。

    3)自己評価、セルフイメージを高める。

    4)DVの被害者である女性や子供を保護する公的機関や施設について教える。

    5)現在の虐待や暴力を止めさせ、将来の虐待や暴力を防ぐ。

  • 個人セラピー

    個々の体験は千差万別ですし、子供の年齢や発達段階、トラウマや症状や問題も様々なので、 グループ療法で対応しきれない部分があります。特に上記のPTSDについては、決定的な治療法はなく、 個人セラピーの中で いろいろな療法を 組み合わせる(ヒプノセラピーの他に、 遊戯療法、認知行動療法、絵画療法、 箱庭療法、カウンセリング、家庭療法など)ことを奨励する専門家が多いです。子供のPTSDの場合、はげまし、味方になってくれる 大人とトラウマの体験を話すことは、癒しにつながるということが多くの研究や臨床の場で証明されています。

参考文献

1)Bolger, K., Thomas, M. Eckenrode, J. (1997). Disturbances in relationships: parenting, family development, and child maltreatment. In Garbarino, J. & Eckenrode, J (Eds.), Understanding abusive families: an ecological approach to theory and practice. San Francisco: Jossey-Bass Inc., Publishers.
2)Dutton, D. G. (2000). Witnessing parental violence as a traumatic experience shaping the abusive personality. In Geffner, R. A., Jaffe, P. G. & Sudermann, M. (Eds.), Children exposed to domestic violence: current issues in research, intervention, prevention, and policy development. New York: The Haworth Maltreatment & Trauma Press.
3)Horton, C. B. & Cruise, T K. (2001) Child abuse & neglect: the school’s response. New York: The Guilford Press.
4)Jaffe, P. & Sudermann, M. (1997). Children and youth who witness violence: new directions in intervention and prevention. In Wolfe, D. A., McMahon, R. J. & Peters, R. D. (Eds.), Child abuse – new directions in prevention and treatment across the lifespan. Thousand Oaks: Sage Publications.

2002年10月20日更新 著作権全権・臨床ヒプノセラピスト・カリフォルニア州公認 臨床心理士・矢納摂子

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